厚生労働大臣 年頭所感

令和8年元旦
厚生労働大臣 上野 賢一郎
(はじめに)
令和8年の新春を迎え、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。本年も何とぞよろしくお願い申し上げます。
厚生労働大臣に就任し、約2か月が経ちました。この間、昨年12月の令和7年度補正予算の成立や令和8年度予算案の閣議決定をはじめ、国民の皆様の安全・安心の確保に万全を期すべく努力してまいりました。
引き続き、私自身が先頭に立ち、厚生労働省一体となって様々な課題に全力で取り組んでまいります。
(全世代型社会保障の構築)
中長期的な社会の構造変化に耐え得る強靱で持続可能な社会保障制度を確立するため、全ての世代で能力に応じて負担し支え合い、必要な社会保障サービスが必要な方に適切に提供される「全世代型社会保障」の構築に向け全力を挙げてまいります。今後、令和5年に閣議決定された「改革工程」、昨年閣議決定された「骨太の方針2025」や「経済対策」に基づき、必要な保障が欠けることがないよう留意し、与党の協議や社会保障審議会の議論等も踏まえながら、標準的な出産費用の無償化、高額療養費制度の見直し、OTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直しや金融所得の反映による応能負担の徹底等について、全世代の安心を保障する観点から、取組を進めてまいります。
(医療・介護・障害福祉分野の物価・賃金対応等)
昨今の物価上昇や人材不足により、医療・介護・障害福祉分野の現場は厳しい状況に直面しております。こうした現状を踏まえ、経営の安定や現場で働く幅広い職種の方々の賃上げに確実につながるよう、まずは昨年末に成立した補正予算に盛り込まれた医療・介護等支援パッケージにより、経営の改善や職員の方々の処遇改善につながる支援を、可能な限り迅速に届けてまいります。また、ICT等を活用した職場環境改善の取組を強力に推進してまいります。
さらに、令和8年度診療報酬改定について、昨年末に決定した改定率を踏まえ、物価や賃金、人手不足等の医療機関等を取りまく環境の変化への対応等を図り、地域で必要な医療を確保してまいります。加えて、介護・障害福祉分野についても、令和8年度の期中改定において、処遇改善等に係る対応を行うなど、充実を図ってまいります。
(持続的な賃上げ)
政府として、物価上昇を上回る賃上げが継続する環境整備に向け、検討を進めてまいります。
また、リ・スキリングによる能力向上支援を行うとともに、高い生産性や高い処遇の職への労働移動を支援し、労働生産性の向上を推進し、「稼げる日本」への変革を進めてまいります。
あわせて、最低賃金の遵守徹底を図るとともに、地方で賃金が上がっていく環境整備を進め、生産性向上に取り組む中小企業等が賃上げしやすい環境整備に向け、「賃上げ」支援助成金パッケージによる支援等に取り組んでまいります。
(新たな地域医療構想、医師偏在対策、医療・介護DX)
先の臨時国会では、将来にわたって、地域での良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制を確保するための改正医療法が成立し、今後施行を着実に進めてまいります。
新たな地域医療構想については、高齢者数がピークを迎える2040年頃を見据え、医療・介護の複合ニーズを抱える高齢者の増大や人口減少などに対応できるよう、入院医療のあり方に限らず、外来や在宅医療、介護との連携までをカバーし、人材確保等の状況も踏まえた医療機関の役割分担や連携を更に推進してまいります。
また、医師偏在対策について総合的な対策を推進するとともに、小児周産期・救急・災害医療体制の充実など、地域の実情に応じた医療提供体制の確保に努めてまいります。
電子カルテ情報の医療機関等の間における共有や医療等情報の二次利用の推進、医療DXの運営に係る母体としての社会保険診療報酬支払基金の改組等の取組を進めるとともに、国民の皆様が安心してオンライン診療を受けられるよう、検討を進めてまいります。
(マイナ保険証)
マイナ保険証は、医療DXの基盤として国民の皆様が健康・医療情報に基づくより良い医療を受けることを可能とするものです。今後、スマートフォンをマイナ保険証として順次利用出来るようになっていく等、マイナ保険証のメリットはますます増えてまいります。昨年10月時点の利用率は47.26%となっており、今後も利用率の向上に取り組んでまいります。
昨年12月をもって、発行済みの保険証が全て有効期限の満了を迎えましたが、引き続き患者の皆様が円滑に医療機関等を受診できることが重要であり、受診方法等について、今後も周知を行ってまいります。
(創薬・医薬品安定供給等)
昨年成立した改正薬機法の施行を着実に進め、医薬品等の品質や安全性の確保の強化、医療用医薬品等の安定供給体制の強化、医薬品の適正な提供のための薬局機能の強化等に取り組んでまいります。
日本成長戦略本部における戦略分野の一つに位置付けられた「創薬」については、官民連携の下、新たな基金等を通じて、創薬の取組への安定的・継続的な支援、そしてその実用化につながる環境整備を進めてまいります。「成長投資」及び「危機管理投資」両方の観点から、官民投資を促進し、強い経済の実現も見据え、産業としての「創薬」を力強く支援してまいります。加えて、国際水準の治験・臨床試験体制整備を推進するとともに、ドラッグ・ロスの解消に向けて、戦略的な取組を進めてまいります。
また、後発医薬品の安定供給については、少量多品目生産という非効率な生産体制の解消に向け、新たな基金を造成し、計画的に生産性向上に取り組む企業を支援してまいります。企業間の連携・協力・再編を強力に後押しするため、企業の取組を認定する枠組みを設けてまいります。
さらに、医薬品による悲惨な被害の再発防止や、国内外の関係機関と連携した規制薬物の乱用防止対策にも取り組んでまいります。
(地域共生社会の実現、包括的な支援の取組)
2040年に向けて人口減少や単身世帯の増加など社会構造が変化していく中、誰も取り残されることなく地域で支え合う地域共生社会の実現のため、社会保障審議会の議論を踏まえ、地域の実情に応じた包括的な支援体制の整備や、頼れる身寄りがいない高齢者等への支援の拡充等について検討を進めてまいります。あわせて、子どもの学習・生活支援や居住支援を始めとした生活困窮者自立支援制度の機能強化等を進めてまいります。また、生活保護の生活扶助基準については、社会経済情勢等を勘案し令和8年度において更なる引き上げを行うとともに、最高裁判決を踏まえた丁寧な対応を進めてまいります。
障害者や難病患者の方々が、地域や職場において、本人の希望に応じて、その方らしく暮らし、働くことができるよう、必要な取組を着実に進めるとともに、障害者の方々の雇用機会の拡大と雇用の質の向上を図ってまいります。
また、誰も自殺に追い込まれることのない社会の実現に向け、関係省庁と連携し、電話・SNS相談体制の拡充など、自殺対策を強化してまいります。
さらに、認知症施策推進基本計画に則って、認知症になっても希望を持って暮らし続けることができるという「新しい認知症観」に立ち、認知症施策に関する取組を推進し、共生社会の実現を目指します。
(介護サービスの提供体制確保)
2040年に向けて、地域の実情に応じた介護サービスの提供体制を確保するための取組について検討を進めてまいります。
また、ICT等を活用した生産性向上の取組を強力に推進し、サービスの質の向上や職場環境改善、介護人材の確保等を図ってまいります。
さらに、訪問介護をはじめとするサービス提供体制の確保を図ってまいります。
(健康・公衆衛生対策、感染症対策等)
人生百年時代に、百年間健康で生きられる「百年健幸」を目指すべく、皆が元気に活躍し、社会保障の担い手になっていただけるための「攻めの予防医療」を推進してまいります。令和7年度補正予算における関連予算の活用をはじめ、特に、令和10年度までにがん検診の精密検査受診率90%を達成できるよう、更なる取組を進めてまいります。第3次の「健康日本21」等を推進し、健康づくり・重症化を含む予防施策に取り組んでまいります。女性の健康支援については、「女性の健康総合センター」を中心として、総合的に推進してまいります。
あわせて、がん対策、循環器病対策、アレルギー疾患対策、受動喫煙対策、難病対策、移植医療対策、広域的な食中毒事案への対策強化、生活衛生関係営業の振興等に引き続き取り組んでまいります。
また、感染症対策については、新型インフルエンザ等対策政府行動計画を踏まえ、科学的知見の基盤・拠点となる「国立健康危機管理研究機構(JIHS)」と連携しながら、次なる感染症危機への備えを着実に進めてまいります。
新型コロナウイルス感染症のほか、各感染症の発生動向を把握し適切に対応するとともに、感染症に罹患された方々が適切な医療を受けられる環境づくりを進めます。加えて、本年六月から各自治体において順次開始される予防接種事務のデジタル化など、予防接種施策の適切な実施を進めてまいります。
加えて、昨年12月に設置した「UHCナレッジハブ」を通じて、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の実現に向けた取組を加速するなど、国際保健に関連する国内外の課題の解決に取り組んでまいります。
さらに、近年の科学的知見等を踏まえ、ゲノム編集技術等を用いた受精胚等の臨床利用に対する規制について検討を進めてまいります。
(多様な人材の活躍促進、職場環境改善)
女性や高齢者を含む国民お一人おひとりがその能力を十分に発揮し活躍できるよう、誰もが健康的で働きやすい働き方を選択することができる社会の実現を目指します。
新卒者等へ大学等と連携しながらきめ細かな就職支援を行うとともに、非正規雇用労働者の方々の正社員への転換や、同一労働同一賃金の更なる遵守徹底等による処遇改善、就職氷河期世代を含む中高年層の方々に対する就労・処遇改善や社会参加等の支援を進めてまいります。
また、企業における70歳までの就業機会の確保や、外国人労働者に対する就職支援の強化、働きやすい環境整備等に取り組むとともに、育成就労制度の円滑な施行に向け、引き続き関係省庁と連携してまいります。
労働時間規制について、働き方の実態・ニーズを踏まえて検討を深め、誰もが安心して働くことができる環境の整備を進めるとともに、過労死等の防止に取り組んでまいります。労災保険制度の見直しについては、今後、労働政策審議会での議論を踏まえ、遺族補償年金等における支給要件等の見直し等について検討を進めてまいります。
職場における女性活躍の推進やハラスメント対策の強化に取り組むとともに、仕事と育児・介護の両立支援や共働き・共育てを引き続き推進し、副業・兼業の促進、テレワークの普及、フリーランスの方々が安心して働くことができる環境の整備を更に進めてまいります。
(年金制度改革等)
昨年成立した年金制度改正法に基づき、被用者保険の適用拡大、在職老齢年金制度の見直し、遺族年金の見直し、標準報酬月額の上限の段階的引上げ、個人型確定拠出年金の加入可能年齢の上限の引上げ等を着実に実施してまいります。
そして、いわゆる「年収の壁」を意識せずに働くことができる環境づくりを後押しするため、「年収の壁・支援強化パッケージ」による支援や、昨年7月に拡充したキャリアアップ助成金による事業主への支援等に取り組んでまいります。
(戦没者・戦没者遺族の慰霊等の推進)
戦後80年が経過する中、戦没者の慰霊と戦争体験者の記憶の継承を着実に継続していくため、戦没者の慰霊事業や、平和の語り部事業に取り組んでまいります。また、一柱でも多くの戦没者の御遺骨を収容し、御遺族に早期にお渡しできるよう全力を挙げてまいります。
(災害への対応)
昨年12月に発生した青森県東方沖を震源とする地震をはじめ、近年、甚大な災害が全国各地で発生しています。被災された皆様が一日も早く安全・安心な生活を取り戻すことができるよう、必要な対応に全力で取り組んでまいります。また、自然災害から国民生活を守るため、保健・医療・福祉の連携強化を含む体制や支援の整備に取り組んでまいります。
そのほか、社会経済の変化に対応しつつ、厚生労働省に対する要請に適時・的確に応えることができるよう、山積する課題に果断に取り組んでまいります。
おわりに、本年が、国民の皆様お一人おひとりにとって、実り多き素晴らしい1年となりますよう心よりお祈り申し上げ、年頭に当たっての私の挨拶といたします。
令和8年元旦

