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厚生労働大臣 年頭所感

令和五年元旦
厚生労働大臣 加藤 勝信
(はじめに)
令和5年の新春を迎え、心よりお慶び申し上げます。本年も何とぞよろしくお願い申し上げます。
厚生労働大臣に就任し、約5か月が経ちました。この間、国民の皆様の安全・安心の確保に万全を期すべく努力してまいりました。引き続き、私自身が先頭に立ち、厚生労働省一体となって様々な課題に全力で取り組んでまいります。
(感染症対策等)
新型コロナウイルス感染症対策については、昨年9月から、オミクロン株の特性等を踏まえ、高齢者等重症化リスクの高い方に対する適切な医療の提供を中心とする考え方に転換し、感染拡大防止と社会経済活動の両立を図っていくため、ウィズコロナに向けた新たな段階への移行を進めています。
昨年10月には、今冬の感染拡大と季節性インフルエンザとの同時流行に備えた対応に万全を期すため、重症化リスク等に応じた外来受診・療養の流れをお示しするとともに、保健医療体制の強化・重点化策を取りまとめ、各都道府県においても体制整備を進めていただいています。
新型コロナワクチンについては、昨年9月からはオミクロン株対応ワクチンの接種を開始しており、引き続き、希望する全ての方が接種を受けられるよう、有効性や安全性等について丁寧な情報提供に努めるとともに、自治体と連携して接種を進めてまいります。治療薬についても、引き続き、複数の選択肢の中からその適応に応じて、適切かつ早期に投与できる体制を強化してまいります。
新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけについては、昨年12月に成立した感染症法等改正法の審議の過程で検討規定が追加されたことも踏まえ、専門家等の意見も聴きながら、最新のエビデンスに基づき、早期に議論を進めてまいります。
さらに、次の感染症危機へ備えるべく、感染症法等改正法の円滑な施行等に努めてまいります。また、「感染症対策部」の設置や新たな専門家組織の創設、食品衛生基準行政、水道整備・管理行政の移管といった組織の見直しについても引き続き検討を進め、次期通常国会への必要な法律案の提出に向けて取り組んでまいります。
また、先の臨時国会に旅館業法等改正法案を提出しておりますが、旅館・ホテルにおける感染防止対策等にも取り組んでまいります。
(災害への対応等)
近年、記録的な大雨による甚大な被害が全国各地で発生しております。改めまして亡くなられ た方々のご冥福をお祈りするとともに、被災された皆様にお見舞い申し上げます。相次ぐ自然災 害から国民生活を守れるよう、「防災・減災・国土強靱化のための5か年加速化対策」として、 重点的かつ集中的に医療・福祉・水道施設等の強靱化に取り組みます。 また、東日本大震災からの復興に向け、私自身も復興大臣であるとの強い意識の下、被災者の 心のケア、医療・介護提供体制の整備、雇用対策などに全力で取り組みます。 (新しい資本主義の実現と全世代型社会保障制度の構築) 昨年秋に、「成長と分配の好循環」と「コロナ後の新しい社会の開拓」をコンセプトとした新 しい資本主義を実現していくための「新しい資本主義実現会議」と、全世代対応型の持続可能な 社会保障制度を構築する観点から、社会保障全般の総合的な検討を行うための「全世代型社会保 障構築会議」が発足しました。
厚生労働省としては、こうした会議での議論も踏まえ、成長と分配の好循環の実現のため、2 つのボトルネックの解消に注力してまいります。 1つ目は、持続的な賃金上昇に向けて、労働生産性と労働分配率の一層の向上を図ることです 。これに向け、新しい就業構造を踏まえた「人への投資」や、賃上げしやすい環境整備等の雇用 政策に注力してまいります。 2つ目は、賃金上昇を消費拡大につなげることです。これに向け、社会保障の機能強化を図っ ていくとともに、看護、介護、保育など現場で働く方々の賃上げを行ってまいります。 社会保障政策・雇用政策は、成長と分配の好循環の創出に貢献するものであり、新しい資本主 義を実現する上で不可欠です。厚生労働省としても、新しい資本主義の実現に向けて、引き続き 、しっかりと取り組んでまいります。
(全世代型社会保障の構築)
国民一人ひとりが将来に希望を持ち、安心して生活できる社会を実現するため、年齢に関わりなく、全ての国民が、その能力に応じて負担し、支え合う「全世代型社会保障」を構築することが必要です。
昨年末に、全世代型社会保障構築会議において、報告書が取りまとめられました。この報告書に基づき、こども・子育て支援の充実、働き方に中立的な社会保障制度等の構築、医療・介護制度の改革、「地域共生社会」の実現について着実に取組を進め、医療保険制度、医療提供体制や介護保険制度の課題については、次期通常国会に関連法案の提出を目指します。また、勤労者皆保険の実現に向けた、被用者保険の更なる適用拡大等についても検討を進めてまいります。
(地域医療体制の整備、医療DXの推進等)
医療分野では、今般の感染症対応で得られた知見を踏まえつつ、地域医療構想、医療従事者の働き方改革、医師偏在対策を一体的に進めるとともに、今後の医療ニーズや人口動態の変化等を踏まえ、かかりつけ医機能が発揮される制度整備を進めます。
医療DXの推進については、今般の感染症対応の経験も踏まえ、質の高い医療の提供や医療情報の更なる利活用の観点から、電子カルテ情報の標準化等を行うとともに、全国医療情報プラットフォームの創設やその基盤となるオンライン資格確認等システムの導入徹底、診療報酬改定DXに取り組みます。あわせて、本年1月から運用を開始する電子処方箋について着実な推進に努めます。
国民の皆様が健康・医療情報に基づいたより良い医療を受けることが可能となるよう、マイナンバーカードと健康保険証の一体化を加速し、令和六年秋の健康保険証廃止を目指します。
(人への投資、多様な就労・社会参加の促進等)
雇用・労働分野では、目下の物価上昇に負けない継続的な賃上げを実現することが重要です。
最低賃金については、賃上げしやすい環境整備に取り組みつつ、できる限り早期に、全国加重平均が千円以上となることを目指します。
さらに、賃上げと、労働移動の円滑化、リスキリングをはじめとした人への投資という三つの課題の一体的改革を進め、賃上げが高いスキルの人材を惹きつけ、生産性を向上させ、さらなる賃上げを生むという好循環による「構造的賃上げ」の実現を目指します。
あわせて、正規雇用と非正規雇用の不合理な待遇差を是正するため、同一労働同一賃金の徹底を図るとともに、女性・若者・高齢者・障害者等の就労支援等に取り組みます。
(生活困窮者等への支援)
コロナ禍や物価上昇等が国民生活に影響を及ぼす中、生活に困窮する方の生活再建に向けて、相談支援体制の充実強化に取り組みます。また、生活保護基準について、審議会での検証結果を適切に反映することを基本としつつ、足下の社会経済情勢等を総合的に勘案して見直しを行います。このように、生活保護制度や生活困窮者自立支援制度等を通じて、生活困窮者等に対する切れ目のない包括的な支援を推進してまいります。
(こども・子育て支援)
こども・子育て支援については、本年4月から出産育児一時金を42万円から50万円に増額します。また、妊娠期から出産・子育てまで一貫した伴走型相談支援と妊娠・出産時の計10万円相当の経済的な支援を一体的に実施する「出産・子育て応援交付金」を創設し、継続的に支援を実施します。
また、本年4月にはこども家庭庁が創設され、こども政策に関する総合調整権限を一元化し、こどもや子育て当事者、現場の視点に立った強い司令塔機能を発揮することが期待されております。関係府省と連携・協力して、設置に向けた準備や今後のこども政策の充実に取り組みます。
あわせて、「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」の令和6年度からの円滑な施行に向けた準備を進めます。
(障害者支援等)
障害者や難病患者の方々が、地域や職場において、本人の希望に応じて、医療、福祉、雇用等の各分野の支援を受けながら、その方らしく暮らし、働くことができるよう、昨年12月に成立した障害者総合支援法等改正法に基づき、障害者等の地域生活の支援体制の強化、多様な就労ニーズに対応した取組の推進、難病患者等に対する適切な医療の充実等に取り組みます。
(G7関係閣僚会合)
本年、我が国はG7の議長国となります。厚生労働分野においても、4月には岡山県倉敷市において労働雇用大臣会合を、5月には長崎県長崎市において保健大臣会合を開催する予定です。開催地の自治体と連携し、国際社会に対し、日本のリーダーシップを示してまいります。
(災害への対応等)
近年、様々な災害が全国各地で発生しています。改めましてお亡くなりになられた方々の御冥福をお祈りするとともに、被災された皆様にお見舞い申し上げます。相次ぐ自然災害から国民生活を守ることができるよう、防災・減災、国土強靱化を進めるため、医療・福祉・水道施設の強靱化等に取り組みます。
また、東日本大震災からの復興に向け、被災者の心のケア、医療・介護提供体制の整備、雇用対策などに引き続き全力で取り組みます。
そのほか、社会経済の変化に対応しつつ、厚生労働省に対する要請に適時・的確に応えることができるよう、医薬品・医療機器施策、薬物対策、がん対策、循環器病対策、健康増進施策、社会福祉、援護施策等、山積する課題に果断に取り組んでまいります。
おわりに、本年が、国民の皆様お一人お一人にとって、実り多き素晴らしい一年となりますよう心よりお祈り申し上げ、年頭に当たっての私の挨拶といたします。