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厚生労働大臣 年頭所感

令和6年元旦
厚生労働大臣 武見 敬三

(はじめに)

 令和六年の新春を迎え、心よりお慶び申し上げます。本年も何とぞよろしくお願い申し上げます。

 厚生労働大臣に就任し、約三か月半が経ちました。この間、国民の皆様の安全・安心の確保に万全を期すべく努力してまいりました。引き続き、私自身が先頭に立って、社会のダイナミズムも取り入れながら、厚生労働省一体となってワンチームで様々な課題に全力で取り組んでまいります。

(医療DXの推進)

 医療DXの実現に向けて、昨年策定した「医療DXの推進に関する工程表」に沿って取組を進めます。具体的には、医療介護全般にわたる情報を共有・交換できる「全国医療情報プラットフォーム」の創設や、電子処方箋の普及拡大、「診療報酬改定DX」などを着実に進めます。また、創薬や医療機器の研究開発等に資する医療等情報の二次利用に関する検討、医療DXに関するシステムの開発・運用主体の検討など準備を進めます。

 医療DXのパスポートであるマイナ保険証は、デジタル社会における質の高い持続可能な医療の実現に必要不可欠であり、国民の皆様が健康・医療情報に基づいたより良い医療を受けることを可能とするものです。私自身が先頭に立って、公的医療機関を始めとする医療機関や保険者と連携してマイナ保険証の利用促進を進めるとともに、現行の健康保険証の発行については、本年十二月に終了し、マイナ保険証を基本とする仕組みに移行することとします。

 

(感染症対策・危機管理体制整備)

 感染症対策については、「ポストコロナ医療体制充実宣言」を踏まえ、次なる感染症危機に備えた病床確保等の協定締結を推進します。また、平時からの感染症対応能力を強化するため、昨年九月に設置した感染症対策部を中心に内閣感染症危機管理統括庁と連携しつつ、新型インフル行動計画の改定の議論など次なる感染症危機への備えに必要な取組を進めます。さらに、今後、世界の感染症対応を牽引できるよう、これまでにない、我が国の感染症に関する科学的知見の基盤・拠点となる「国立健康危機管理研究機構」の設立に向け、昨年末に「T-VISION」を公表しました。本年一月には私をトップとする準備委員会を設置し、組織再編やネットワーク構築等の具体的な内容について三月末までにとりまとめ、着実に準備を進めます。

 

(新型コロナウイルス感染症への対応)

 新型コロナウイルス感染症への対応については、この冬の感染拡大に備えた重点的・集中的な支援を行うとともに、本年四月からの確保病床によらない通常の医療提供体制への移行に向けて準備を進めます。

 新型コロナワクチン接種は秋冬の接種を実施するとともに、来年度の高齢者等向けの定期接種化に向けた準備に取り組みます。また、ワクチン接種により健康被害が生じた方については、引き続き、予防接種法に基づき迅速に救済するとともに、コロナの罹患後症状、いわゆる後遺症に悩む方々が、適切な医療を受けられる環境づくりを進めます。

 

(創薬基盤の強化・医薬品等の開発環境整備)

 我が国が、世界の創薬基盤の一つになるべく、質の高い研究を生み出し、製品化していくための革新的な医薬品の開発を促進するための環境整備について、関係省庁と連携しつつ取り組みます。潜在力の高い日本のアカデミアが、国内のみならず海外の専門家、行政、投資家、大企業などと相互に協力しながらスタートアップの立ち上げと成長を支える、国内外に開かれたエコシステムを構築します。また、海外のエコシステムの主要な関係者とも連携しつつ、革新的なシーズの発見に重要なアカデミアの研究を質の高い製品として創製していく上でのファイナンスやそのガバナンスを確立します。

 

(グローバルヘルスへの貢献)

 人間の安全保障の考えに基づき、世界全体におけるより強靱、より公平、より持続可能なユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を達成するため、G7広島首脳コミュニケに盛り込まれた「財政、知見の管理、人材を含むUHCに関する世界的なハブ機能の重要性」を踏まえた取組を進めます。また、将来の健康危機の予防・備え・対応の強化など、グローバルな課題に的確に対応します。

(全世代型社会保障)

 少子高齢・人口減少社会においては、持続可能な社会保障制度の構築が重要です。全ての世代で能力に応じて負担し支え合い、必要な社会保障サービスが必要な方に適切に提供される「全世代型社会保障」を構築するため、昨年末に策定された改革工程に沿って、こども・子育て支援の充実、医療・介護制度の改革等に向けた取組を着実に進めます。

(医療・介護の提供体制の確保等)

 医療分野では、地域医療構想、医療従事者の働き方改革、医師偏在対策を一体的に進め、地域の医療機関の機能分化・連携を推進するとともに、かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に向けた検討を進めます。

 高齢者介護については、地域包括ケアシステムの深化・推進を進めるとともに、共生社会の実現に向け、普及啓発や本人発信の支援など総合的な認知症施策を推進します。あわせて、介護ロボット、ICT等を活用した介護現場の生産性向上の取組により、サービスの質の向上や職場環境の一層の改善に取り組むとともに、必要な処遇改善を図るなど、総合的な人材確保対策を進めます。

 特に、六年に一度の診療報酬、介護報酬、障害福祉サービス等報酬の同時改定について、昨年末決定した改定率の下で、物価高騰・賃金上昇、経営の状況、支え手が減少する中での人材確保の必要性、患者・利用者負担・保険料負担への影響を踏まえながら、こうした分野で働く方の賃上げを実現するとともに、患者・利用者が必要なサービスを受けられるような対応を行います。

(三位一体の労働市場改革等)

 雇用・労働政策については、社会経済の変化の流れに沿った労働市場改革と働き方改革により、働く方々のウェルビーイングの向上を目指します。

 まず、成長と分配の好循環による、物価上昇を上回る持続的な賃上げの実現に向けて「リ・スキリングによる能力向上支援」、「個々の企業の実態に応じた職務給の導入」、「成長分野への労働移動の円滑化」という三位一体の労働市場改革を進めるとともに、人材確保の支援に取り組みます。

 また、雇用保険について、多様な働き方を支えるセーフティネットの構築や労働者の主体的なキャリア形成支援、男女ともに育児に関わることのできる環境の整備等を推進するための関係法案を次期通常国会に提出することを目指します。あわせて、求人・求職・キャリアアップに関する官民情報の共有化、職業情報・職場情報の見える化に向けた情報基盤の整備等を進めます。

 最低賃金については、公労使三者の最低賃金審議会で毎年の最低賃金額についてしっかりと議論を行い、二〇三〇年代半ばまでに全国加重平均が千五百円となることを目指し、生産性向上等に取り組む中小企業への支援に取り組みます。

 

(希望する働き方の実現)

 正社員への転換等の取組を進めるとともに、非正規雇用労働者の処遇改善を図るため、同一労働同一賃金の遵守に向けた取組の強化を図ります。また、働き方の多様性を踏まえつつ、過労死等の防止、メンタルヘルス対策、副業・兼業に取り組める環境の整備、テレワークの普及、フリーランスの方々が安心して働くことができる環境の整備を更に進めます。

 男女ともに仕事と育児・介護を両立できるようにするための関係法案を次期通常国会に提出することを目指します。

 医師・建設業・自動車運転の業務等の時間外・休日労働上限規制については、本年四月からの施行に向け、丁寧に準備を進めます。

 七十歳までの就業機会の確保を推進するとともに、外国人労働者に対する就職支援の強化、働きやすい環境整備等に取り組みます。技能実習制度については、関係省庁と連携し、新たな制度の創設に向けた具体的な検討を進めます。

 いわゆる「年収の壁」を意識せずに希望どおり働くことのできる環境づくりを後押しする「年収の壁・支援強化パッケージ」について、引き続き積極的な周知広報等に取り組みます。

(包摂社会の実現)

 地域共生社会の実現に向け、複数の生活課題を抱えている方々や、地域社会から孤立している方々など、様々な支援ニーズに対応していくため、包括的な支援体制の構築に取り組みます。また、障害者や難病患者等への支援に引き続き取り組みます。関係省庁と連携し、自殺対策を強化するとともに、本年四月に施行される「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」に基づき、困難な問題を抱える女性への包括的な支援に取り組みます。

 生活困窮者自立支援制度及び生活保護制度については、住まい支援の強化や子どもの貧困への対応を行うため、関係法案を次期通常国会に提出することを目指します。

 

(年金制度改革)

 年金制度については、五年に一度の財政検証を本年行うこととしており、これを受けて行うこととなる次期年金制度改正に向けて、社会経済や労働市場の変化に対応した制度の在り方について、引き続き議論を深めてまいります。

 

(健康政策・公衆衛生施策、医薬品等の安全性の確保等)

 国民の健康寿命の延伸を図るため、本年四月から開始する「健康日本21(第三次)」等に基づき、予防・重症化予防・健康づくりの取組を推進します。また、事業主健診、産業保健体制の充実や、女性の健康・疾患の研究等に関するナショナルセンター機能の構築を含めた女性の健康支援に取り組みます。

 また、遺伝子治療など、先端的な医療技術の研究の推進を図るための所要の法制度の検討を進めます。

 さらに、医薬品等の安全性の確保や薬害の再発防止に一層取り組むとともに、昨年成立した「大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律」の円滑な施行を進め、危険ドラッグ対策も推進します。

 

(災害への対応等)

 相次ぐ自然災害から国民生活を守ることができるよう、医療・福祉・水道施設の強靱化等に取り組みます。

 また、東日本大震災による被災者の心のケア、医療・介護提供体制の整備、雇用対策等に引き続き全力で取り組みます。

 そのほか、社会経済の変化に対応しつつ、厚生労働省に対する要請に適時・的確に応えることができるよう、がん対策、健康増進施策、社会福祉、援護施策等、山積する課題に果断に取り組んでまいります。

 おわりに、本年が、国民の皆様お一人お一人にとって、実り多き素晴らしい一年となりますよう心よりお祈り申し上げ、年頭に当たっての私の挨拶といたします。

令和六年元旦

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