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厚生労働大臣 年頭所感

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令和7年元旦
厚生労働大臣 福岡 資麿

(はじめに)

令和七年の新春を迎え、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。本年も何とぞよろしくお願い申し上げます。

厚生労働大臣に就任し、約三か月が経ちました。この間、国民の皆様の安全・安心の確保に万全を期すことにより経済活動の安定に資するよう努力してまいりました。引き続き、私自身が先頭に立ち、厚生労働省一体となって様々な課題に全力で取り組んでまいります。

(災害への対応)

昨年一月の能登半島地震の発生から一年となります。その後の大雨なども含め、改めましてお亡くなりになられた方々にお悔やみを申し上げますとともに、被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。被災された皆様が一日も早く安全・安心な生活を取り戻すことができるよう、雇用対策や被災者の見守り、心のケア等に引き続き全力で取り組んでまいります。また、近年様々な災害が全国各地で発生している中、自然災害から国民生活を守ることができるよう、保健・医療・福祉の体制や支援の強化等に取り組みます。

(医療介護分野の賃金対応等)

足元の人材確保への対応として、令和六年度報酬改定において講じた医療・介護・障害福祉分野の職員の処遇を改善するための措置を確実に届け、現場で働いている方々にその効果を実感いただけるようにしていくとともに、更なる賃上げを図るための支援を行ってまいります。

また、介護分野については、ICT等を活用した生産性向上の取組を強力に推進し、サービスの質の向上や職場環境改善を図るとともに、訪問介護の提供体制の確保や、介護人材の確保・育成・定着に向けた取組を支援してまいります。

(持続的な賃上げ)

持続的・構造的な賃上げを実現するため、引き続き、三位一体の労働市場改革を進めつつ、最低賃金については、二〇二〇年代に全国平均千五百円という高い目標に向かって、たゆまぬ努力を続けます。中小企業等が賃上げしやすい環境整備に向け、関係省庁と連携し、生産性向上支援や価格転嫁対策の徹底等に取り組んでまいります。

(年収の壁、年金制度改革)

いわゆる「年収の壁」を意識せずに働くことができる環境づくりのため、「年収の壁・支援強化パッケージ」について、申請書類の簡素化、審査の迅速化、ワンストップ相談体制の整備によって、社会保険の対象となる短時間労働者の方々をきめ細かく支援してまいります。

 また、公的年金制度については、昨年十二月の社会保障審議会年金部会等の取りまとめに基づき、働き方に中立な制度とする観点や、年金の所得保障機能、所得再分配機能の強化を図る観点から、制度の見直しに取り組むとともに、高齢期に向けた資産形成を支援し、多様な働き方やライフコースに対応する観点から、私的年金制度の見直しにも取り組んでまいります。

(全世代型社会保障制度の構築)

本格的な少子高齢化・人口減少という時代の大きな変革期にあっても、国民お一人おひとりが安心して生活できる社会保障制度を構築し、しっかりと次代に引き継いでいくため、能力に応じて皆が支え合う、全世代型社会保障を構築していくことが重要です。高額療養費制度については、高齢化や高額薬剤の普及等によりその総額は年々増加しており、結果として現役世代を中心とした保険料が増加してきました。そのため、現役世代をはじめとする社会保険料負担の軽減を図るとともに、セーフティネットとしての役割を今後も維持していく観点から見直しを行うほか、令和5年末に閣議決定した「改革工程」に掲げられた他の項目についても、必要な保障が欠けることがないよう十分配慮しながら、検討を行ってまいります。

(マイナ保険証、医療・介護DX、地域医療構想)

マイナ保険証は、医療DXの基盤として国民の皆様が健康・医療情報に基づいたより良い医療を受けることを可能にするものです。先月からマイナ保険証を基本とする仕組みへと移行したところですが、最長一年間、発行済みの保険証を使い続けられることや、マイナ保険証をお持ちでない方に対して申請によらず保険者から資格確認書を交付するなど、引き続き、すべての方が安心して保険診療を受けられる環境整備に取り組んでまいります。

医療DXの実現に向けて、医療介護全般にわたる情報を共有できる「全国医療情報プラットフォーム」を創設するとともに、マイナポータルを活用し公的な健診情報をご自身で把握することが可能となるよう取組を進めます。また、創薬や医療機器の研究開発等に資する医療等情報の二次利用の推進や、社会保険診療報酬支払基金を医療DXに関するシステムの開発・運用主体として抜本的に改組することなどについて検討を進めるとともに、医療機関等におけるサイバーセキュリティ対策に万全を期してまいります。国民の皆様が安心してオンライン診療を受けられるよう、その適切な実施と推進のための方策について検討を進めてまいります。

2040年頃を見据え、医療・介護の複合ニーズを抱える高齢者の増加や現役世代の減少などに対応できるよう、入院のみならず、かかりつけ医機能や在宅医療、医療・介護連携等を含め、医療提供体制全体をカバーする新たな地域医療構想の策定に向けた検討を進めてまいります。

また、医師偏在については、昨年末に策定した総合的な対策のパッケージに基づく取組を順次行うこととしており、先行して、医師不足の地域で承継又は開業する診療所への支援やリカレント教育、医師不足区域の医療機関とのマッチング支援等に取り組みます。

(創薬・医薬品安定供給)

医薬品産業を成長産業と位置付け、政府をあげて、日本を「創薬の地」とするための支援を行います。優れた創薬シーズを基にしたスタートアップの創出を促進するため民間投資を呼び込む体制を強化するほか、創薬クラスターの発展支援によって、革新的医薬品の研究開発を加速する環境を整えます。あわせてドラッグ・ロスの解消に向けて、未承認薬のうち我が国に必要性の高い医薬品を優先して対応し、企業における開発が進むように戦略的に対応するための取組を進めてまいります。

また、後発医薬品の安定供給については、少量多品目生産の非効率な生産体制の解消に向け、計画的に生産性向上に取り組む企業を支援するため、後発医薬品供給支援基金を造成します。この際、企業間の連携・協力・再編を強力に後押しするために企業の取組を認定する枠組みを法的に整備するとともに、薬事・薬価面での対応についても、検討を深めてまいります。

(多様な人材の活躍促進、職場環境改善)

職場における女性活躍を推進するため、男女間の賃金差異に関する情報公表の義務を従業員百一人以上の企業に拡大することについて検討するとともに、いわゆるカスタマーハラスメントや就職活動中の学生等に対するセクシュアルハラスメントといった職場におけるハラスメント対策の強化について検討を進めてまいります。

年齢にかかわらず働くことができる社会の実現に向けて、七十歳までの就業機会の確保に取り組むとともに、外国人労働者に対する就職支援の強化、働きやすい環境整備等に取り組んでまいります。また、育成就労制度の円滑な施行に向け、出入国在留管理庁等と連携してまいります。

また、非正規雇用労働者の方々の正社員への転換や、同一労働同一賃金の更なる遵守徹底などによる処遇改善に取り組むとともに、いわゆる就職氷河期世代を含む中高年層の方々に対し、就労や社会参加を支援してまいります。

多様な人材が安心して働き続けられる環境を整備するため、個人事業者や高年齢労働者の安全衛生対策の推進、ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策の強化等を進めてまいります。働く人の意識や働き方の多様化を踏まえつつ、今後の労働基準関係法制の見直し等に向け、検討を進めてまいります。

仕事と育児・介護の両立に向けた環境の整備、安心して副業・兼業に取り組むことができる環境の整備、テレワークの普及、フリーランスの方々が安心して働くことができる環境の整備を更に進めてまいります。

(感染症対策)

新型コロナウイルス感染症については、地域の医療機関の連携などによる幅広い医療機関における患者受け入れ体制の整備、高齢者施設における医療機関との連携体制の確保、さらには、感染症治療薬や対症療法薬の安定供給などに取り組んでまいります。あわせて新型コロナの罹患後症状、いわゆる後遺症に悩む方々が、適切な医療を受けられる環境づくりを進めてまいります。

また、昨年10月より実施している六十五歳以上の方等の重症化予防を目的とした新型コロナワクチンの定期接種については、引き続き、対象の方に対して接種を検討していただけるよう呼びかけるとともに、ワクチン接種により健康被害が生じた方々については、予防接種法等に基づき迅速に救済してまいります。本年四月から、帯状疱疹ワクチンを定期接種に位置づけるとともに、HPVワクチンについてはキャッチアップ接種期間中に接種を希望したすべての対象者に接種機会を提供できるよう、期間内に一回以上接種した方を対象として、一年間の経過措置を設けます。

さらに、科学的知見の基盤・拠点となる「国立健康危機管理研究機構」が本年四月に創設される予定であり、昨年七月に閣議決定された新型インフルエンザ等対策政府行動計画を踏まえ、次なる感染症危機に対して着実に備えてまいります。

(健康・公衆衛生対策)

国民の健康寿命の延伸を図るため、「健康日本21(第三次)」等を推進し、国民お一人おひとりが健康意識を高めていただけるよう、予防・重症化予防・健康づくりに取り組みます。

女性の健康支援については、昨年十月に国立成育医療研究センターに設置された「女性の健康総合センター」の取組を含め、総合的に推進してまいります。

臓器移植については、臓器提供者数の増加に対応していくために、臓器移植体制の抜本的見直しなどの取組を進めてまいります。

また、機能性表示食品を含むいわゆる健康食品による健康被害事案への対応等、食の安全の確保に取り組んでまいります。

そのほか、がん対策、循環器病対策、難病対策、生活衛生関係営業の振興等についても取り組んでまいります。

(包括的な支援の取組)

地域共生社会の実現に向け、包括的な支援体制の整備や、成年後見制度の利用促進、身寄りのない高齢者等が抱える生活上の課題への対応などに取り組むとともに、改正生活困窮者自立支援法等の円滑な施行に取り組みます。また、生活保護の生活扶助基準については社会経済情勢等を踏まえた対応を行ったところです。

さらに、第四次自殺総合対策大綱のもとで、どなたも自殺に追い込まれることのない社会の実現に向け、関係省庁と連携し、自殺対策を強化します。昨年末に閣議決定された認知症施策推進基本計画に則って、認知症になっても希望を持って暮らし続けることができるという「新しい認知症観」に立ち、認知症施策に関する取組を推進し、共生社会の実現を目指します。

(戦没者・戦没者遺族の慰霊等の推進)

本年は、戦後80年を迎える節目の年となります。改めて弔慰の意を表すための戦没者等の遺族に対する特別弔慰金の継続支給、戦没者遺児による洋上慰霊の実施、次世代への戦争に関する記憶の継承を行う平和の語り部事業の拡充等に取り組みます。また、国の責務として可能な限り多くの御遺骨を収容し、御遺族に早期にお渡しできるよう全力を尽くすほか中国残留邦人等に対する支援策もきめ細かく実施してまいります。

 

そのほか、社会経済の変化に対応しつつ、厚生労働省に対する要請に適時・的確に応えることができるよう、山積する課題に果断に取り組んでまいります。

おわりに、本年が、国民の皆様お一人おひとりにとって、実り多き素晴らしい一年となりますよう心よりお祈り申し上げ、年頭に当たっての私の挨拶といたします。

 

令和七年元旦

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